こどもの病気

西条地区のお産状況

はじめに

私たち小児科医にとって毎日の診療は勿論、予防接種や健診は非常に大切な業務です。私は当院近くの産婦人科診療所での新生児健診の機会を得ました。
院長先生の許可を得て、当地区のお産状況を調べさせて頂きました。同時に私が産婦人科診療所に出向き新生児健診を行うことにより、当院の新生児や乳児の新規患者数に変化があるか否かを調べてみました。



対象および方法

私はH25年4月からH27年3月まで当院近くの産婦人科に出向き新生児健診を行ないました。当該産婦人科では原則正常分娩は5日齢で退院、帝王切開では8日齢で退院することになっています。H26年度の1年間に当該産婦人科にて出生した434人のうち、私が健診する前に退院した11名を除く423人について調べさせて頂きました。
当院における1歳未満の新規患者数の検討は、新生児健診前のH24年度を対照とし、H25年度およびH26年度に当院を受診した新規患者数を月齢ごとに比較しました。



結果

1.西条市のお産状況

居住地区では、当該産婦人科がある旧西条地区が最も多く201人、旧周桑地区が96人、新居浜市が21人、その他(里帰り分娩)が100人でした(4人記載忘れ)(図1)。
母親の年齢を出産回数別に調べました。第一子の母親の年齢は25-29歳、30-34歳、20-24歳、35-39歳、19歳以下、40歳以上の順でした。
第二子の母親の年齢も第一子とほぼ同様でしたが、19歳以下の母親で2子をもうけている者はいませんでした。第三子の母親の年齢は30-34歳、25-29歳、35-39歳の順で、第四子以上では、30-34歳、35-39歳の順でした(図2)。
在胎週数では満期産がほとんどで、39週が最も多く、以下40週、38週、41週37週でした。36週の早期産は2人、42週の過期産児は1人見られました(図3)。
出生体重では3000から3500g未満が最も多く、以下2500から3000g未満、3500から4000g未満の順でした。2000から2500g未満の低出生体重児は15人で、このうち1人は骨の異常を認め、愛媛大学病院を、もう1人は無呼吸があり、県立新居浜病院を紹介しました。4000g以上および2000g未満の児はいませんでした(図4)。
分娩様式は経膣正常分娩が275名、吸引分娩が84名、帝王切開が59名(14%)でした(4名記載忘れ)(図5)。
B群溶連菌(GBS)が児に垂直感染を起こすと、早発型(肺炎、髄膜炎、敗血症、ショック、DIC)と遅発型(1週間以降、髄膜炎が主)の感染症を起こし、早発型では児の死亡や後遺症としての重篤な中枢神経障害を合併する危険性がある怖い病気です。GBSの保因者は日本では6-10%、その中で重篤な感染症を発症するのは約1%、したがって全分娩数の約1/1,000未満の発病率と考えられています。今回の結果では11.7%の保因者がいましたが、発症した児はいませんでした(図6)。
何らかの理由で産科から他院を紹介した症例は28人でした。そのうち7人は直接産科から二次病院に紹介、21人は当院に紹介されました。当院に紹介された21人のうち精査、治療目的に他病院紹介した症例は8人で、残り13人は当院で経過観察しました(図7)。他病院を紹介した15人の詳細です。黄色で示した症例は産科から直接二次病院を紹介した7人で、紹介病院は全て県立新居浜病でした。無呼吸が3人、酸素飽和度(SpO2)の低下が2人、高ビリルビン血症、多呼吸がそれぞれ1人でした。診断は胎児ジストレス、ABO不適合、エアリーク、VSD、縦隔気腫でした。残り8人は当院から精査のため他病院を紹介しました(表1)。


2.当院における新生児と乳児の新規患者数の変化

産婦人科に健診に出かけることで、当院の新生児(1か月未満)や乳児(1歳未満)の患者さんの数がどう変化するかを調べました。新生児健診前のH24年度を対照とし、H25年度およびH26年度に当院を受診した新規患者数を月齢ごとに比較しました。
H24年度の新生児の新規患者数は23例で、H25年度およびH26年度はそれぞれ44人、35人でありH25年度はH24年度に比して有意(p<0.05)に増加していました。1か月児ではH24年度は71人であり、H25年度およびH26年度はそれぞれ87人、67人であり有意差は認められませんでした。2か月児ではH24年度が144人、H25年度およびH26年度はそれぞれ157人、174人でH26年度ではH24年度に比して有意(p<0.05)に増加していました(図8)。
新生児と1か月児の合計ではH24年度、H25年度およびH26年度はそれぞれ94人、130人および102人で、H25年度ではH24年度比べて有意(p<0.05)に増加していましたが、H26年度では差はありませんでした。2か月以下ではH25年度およびH26年度ではH24年度に比して有意(p<0.01)に増加していました(図9)。
産婦人科からの当院への新生児および1か月児の紹介数を調べました。H24年度は1人のみでしたが、新生児健診後はH25年度およびH26年度はそれぞれ28人、21人と増加していました(p<0.0001)(図10)。
3か月より年長児も調べましたが、新規患者数は不変かまたはむしろ減少しており、1歳未満の新規患者総数ではH24年度は436人、H25年度は456人、H26年度は433名であり差はありませんでした(図11)。



考察

近くの産婦人科診療所に新生時健診に出務することにより、産科からの紹介数は増加し、早期に当院を受診する傾向が認められました。しかし乳児全体では受診数の増加には至りませんでした。当地区では分娩可能な産科診療所は1軒で(総合病院産婦人科1軒)、小児科診療所は6軒(総合病小児科1軒)という特殊な事情があり、かかりつけ小児科が分散されるためと考えられました。しかし、小児科を早期受診する機会が増加することは早期の予防接種につながり、病気の予防の観点からも重要なこと思われました(図12)。



まとめ

1)0、1、2か月児の受診数は増加していました。
2)0、1か月児の増加は産科からの紹介患者数増加のためと思われました。
3)1歳未満の新規患者総数の増加は認められませんでした。

最後にデータの開示を快く承諾して頂きました坂田圭司院長に深謝いたします。