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1.はじめに

インフルエンザはかかったことがある人も多く、みなさんもよくご存知の病気だと思いますが、解説してみます。

インフルエンザは毎年12月上旬から3月にかけて(1月末から2月上旬がピーク)爆発的に流行し、総人口の5〜15%の人が罹患すると言われています。感染経路は空気感染または飛沫感染および接触感染であり、潜伏期は通常1〜4日(平均2日)で感染可能期間は発症前1日から発症後7日です。

症状は突然の高熱、咽頭痛、頭痛、筋肉痛、倦怠感で始まり、鼻汁、咳嗽などの呼吸器症状を伴います。嘔吐や腹痛などの消化器症状を認めることもあります。抗インフルエンザ薬などで治療します。合併症としては、仮性クループ、気管支炎、肺炎、熱性けいれん(インフルエンザの5.5%)、中耳炎などが多く見られ、まれに急性脳症(インフルエンザ脳症、小児1万人に数人)、さらにまれに心筋炎の報告もあります。

出席停止期間は2012年4月に「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」とされています。

毎年流行しますが、予防が大切です。一般的な予防方法として、以下のようなことが言われています。

インフルエンザワクチン
マスクの着用:飛沫感染する距離は90cm
十分な手洗い
換気
保温・保湿(70〜80%)
バランス良い栄養
十分な睡眠


2.インフルエンザワクチンについて

日々の診療中に『インフルエンザワクチンは受けたいが、いつ打つのが一番効果的なのですか?』という質問をよく受けます。

2回接種した成績では、接種1~2週間後に抗体が上昇し始め、2回目の接種1か月後までにはピークに達し、3~4か月後には徐々に低下傾向を示します。したがって、ワクチンの効果が期待できるのは接種後2週から3~5か月までとされています。一般的には、効果的な接種時期は、流行期が通常12月から翌3月頃であるから、これに備えて12月までには接種が終了するような接種計画を組むことが重要といわれています。


3.当院での過去11年間のインフルエンザ流行状況

H16-17(2004-2005)年からH26-27(2014-2015)年の11シーズンにおける当院のインフルエンザ患者さん(迅速キットで陽性者のみ)を週別に検討しました。それぞれの年の流行状況を図示します。

H16-17(2004-2005)年は流行開始時期は遅く、A、Bともに2月から始まりそれぞれ2月末、3月初旬をピークに4月には終了しました。5月にA型の散発がみられました。全体として中規模の流行でした(図1)。

H17-18(2005-2006)年は流行開始時期は早く、12月からA型の流行が始まり2月初旬にピークとなり、3月末で流行は終了しました。B型は4月末から小さな流行が始まり、6月初旬で終了しましたが、少数でした。全体としては中規模の流行でした(図2)。

H18-19(2006-2007)年は1月中旬ころからA型、2月終わりころからB型が流行しはじめ、6月まで続きましたが、全体としは小規模な流行でした(図3)。

H19-20(2007−2008)年は12月の最初かからA型の流行がみられ2月初旬にピークを向かえ、4月には終息しました。B型は2月終わり頃から流行し4月末で終了しました。全体としては大きな流行ではありませんでした(図4)。

H20-21(2008-2009)年は12月末からA型、1月初旬からB型の流行が始まりともに4月頃まで続き、非常に大きな流行となりました(図5)。

H21-22(2009-2010)年は記憶に残る年となりました。世界中がパニックに陥ったいわゆる新型インフルエンザ(現在はH1N1pdm)の登場の年でした。この年5月に国内初の患者さんが神戸市で確認され、日本中に厳戒態勢がひかれました。当院では8月7日、10か月の男児が最初の症例でした。その後、流行には至りませんでしたが、西条まつりの後から大流行し、2月の中頃に終息しました。この年はB型は1例もみられませんでした(図6)。

H22-23(2010-2011)年はA型は12月末から流行し始め2月初旬と、4月末とに2峰性のピークがありました。前半のピークは前年からのいわゆる新型(H1N1pdm)、後半のピークは主にA香港型(A3N2)でした(当院HP感染症情報(2)参照)。B型は3月〜4月に小さな流行が見られました。全体的には中規模の流行でした(図7)。

H23-24(2011-2012)年はA型は12月末から、B型は1月初旬から流行が始まりA型は1月後半と2月中頃の2峰性、B型は2月中頃をピークに大きな流行が見られました。全体としても大きな流行となりました(図8)。

H24-25(2012-2013)年は12月中旬から始まり1月中頃にピークを向かえ、3月中頃にはほぼ終息しました。B型は1月中頃に少しみられましたが小さな流行でした。全体としては中規模の流行でした(図9)。

H25-26(2013-2014)年は12月末からA型、1月初旬からB型が流行し始め、それぞれ2月中頃、2月後半にピークを向かえゆっくりと減少して5月後半までみられました。全体としては中規模の流行でした(図10)。

H26-27(2014-2015)年では12月中旬から流行が始まり、1月中から後半にピークを向かえ、3月にはほぼ終息しました。全体として中規模の流行でした(図11)。

11シーズンの流行状況を年別、A型、B型別に検討しました。流行の規模は年ごとに異なっていました。A型は毎年流行し、B型は一般的には隔年に流行すると言われていますが、当院の検討では2〜4年毎の流行が見られました(図12)。

当地区でのインフルエンザの流行時期をわかりやすくするために、いわゆる新型のみの流行であったH21-22(2009-2010)年を除く10年間の症例数を月ごとに合計しました。2月が最も多く、続いて1月、3月、4月、12月、5月となっていました(図13)。当地区ではインフルエンザの流行は全国状況と比べてやや後ろにずれる(12月より4月が多い)傾向が見られました。

ワクチン接種は1回接種の方は流行の1か月前、2回接種の方は2か月前から接種する必要があり、少なくとも12月中頃までには接種を終了する事が重要と思われました。また、罹患していなければ1月に接種も可能であり、流行期に入り接種する場合は、急いで1回接種し、間に合えば2週後に2回目を接種する方法も良いと思われました。なお、3月に受験を迎える受験生では2月の接種も効果的と思われました。

近年、インフルエンザの流行は、A(H1N1)pdm09およびA(H3N2)に加えてB型である山形系統とビクトリア系統の混合流行が続いており、 WHOも2013年シーズン(南半球向け)から4価ワクチン向けにB型2系統からそれぞれワクチン株を推奨しています。また、米国においては2013/14 シーズンから4価ワクチンが製造承認され、世界の動向は4価ワクチンへと移行してきています。このことから、わが国においても4価ワクチン導入の是非を検討 し(インフルエンザワクチン株選定のための検討会議)、2015-16シーズンよりA/H1N1pdm09、A/H3N2、に加えてB/山形系統およびB /ビクトリア系統の4価ワクチンとなりました(今まではB型1種類の3価ワクチン)。そのためにワクチン本体の価格が上がり、接種料金も値上げせざるを得なくなりました。特に2回接種では費用も大変だと思いますが、是非接種することをお勧めいたします。


4.当院でのH27-28年シーズンのインフルエンザについて

はじめに
前回、11年間のインフルエンザについてまとめて報告しました。今回はH27-28年シーズンのインフルエンザ症例において、年齢別罹患者数やワクチンの効果ついて報告します。

対象と方法
H27年11月7日からH28年5月9日までにインフルエンザを疑い迅速検査を施行した延べ1430例を対象にしました。
方法は罹患症例を週別、年齢別に集計しました。また、全症例のインフルエンザワクチンの接種歴を調べ、A型罹患例、B型罹患例および陰性例のワクチン接種率を比較しました。

結果
H27-28(2015-2016)年シーズンの流行の始まりは遅く、当院での初めての症例はH28年1月6日のA型でした。以後、A型を中心に徐々に増加し、2月中頃からはB型の流行が始まりました。3月初めには大きなピークを迎え徐々に減少してきました(図1)。

年齢別では5-9歳が最も多く、続いて0-4歳、10-14歳、15歳以上でしたが、当院が小児科であるためのバイアスを考慮する必要があると思われます(図2)。

ワクチン接種については、検査した1430例中ワクチン接種していた人は629例(44.0%)でした。また、629例中452例は当院で、170例は他院で接種していました(図3)。

インフルエンザ罹患とワクチン接種との関係では、A型罹患者、B型罹患者ともに、罹患しなかった人たちよりもワクチン接種率は低かった(図4)。

まとめ
今シーズンはインフルエンザの流行開始時期は遅かったが、全体としてはB型を中心に大きな流行となりました。ワクチンはA型、B型ともに有効だったと考えられました。


5.当院でのH28-29年シーズンのインフルエンザについて

はじめに
H28-29年シーズンのインフルエンザ症例において、週別患者数、年齢別罹患者数について報告します。また、迅速診断キットについて検討した結果を報告します。

対象と方法
H28年10月31日からH29年4月10日までにインフルエンザを疑い迅速検査を施行した延べ1132例を対象にしました。
罹患症例を週別、年齢別に集計しました。迅速診断キットはT社、A社、O社のキットを用いました。各キットで陽性判定までの時間を測定しました。また、発熱から6時間以内に来院された患者さんで、同意を得られた症例に対して、銀増幅法および従来法(T社、A社、O社のいずれか)一つを選び、同時に2つの方法での検査を行い、それぞれ陽性までの時間を測定しました。

結果
H28-29(2016-2017)年シーズンの流行は早く始まり、当院での初めての症例はH28年11月16日のA型でした。以後、徐々に増加し、1月末から2月初めにかけてピークを迎え徐々に減少してきました。B型はほとんど流行しませんでした。B型の流行がなかったためか、全体としては中規模の流行でした。(図1)。

年齢別では5-9歳が最も多く、続いて0-4歳、10-14歳、15歳以上で咋シーズンと同じ傾向でした。当院が小児科であるためのバイアスを考慮する必要があると思われます(図2)。

迅速診断キットの比較をしました。判定までの時間はO社のキットが最も早く以下A社、T社の順でした。(図3)。統計学上はこの表し方は正しくはありませんが、わかりやすくするために平均+標準偏差のグラフで示しました。
銀増幅法との比較では、結果の一致率はT社、A社では100%、O社では95%でした。3つの迅速診断キットともに銀増幅法よりも優位に短時間に診断可能でした。(図4図5図6

まとめ
今シーズンはインフルエンザの流行開始時期は早かったのですが、全体としてはB型がほとんど流行せず、中規模の流行となりました。
迅速診断キットはいずれも有用であり、慣れたキットを使いこなすことが重要であると思われました。
発症早期では通常の診断キットの陽性率は低く、銀増幅法が有用であるとされています。銀増殖法とは従来法に加え、標識抗体に写真の現像技術を用い、大きな銀粒子を付けて高感度にしたものです。今回の検討では発症6時間以内の発症早期症例でも従来法と銀増幅法の結果は一致しており、反応時間およびコスト面から従来法での判定で十分であることがわかりました。しかし、今回はA型のみでの検討であるため、B型の流行の際には異なる結果となる可能性もあると思われました。


6.当院でのH29-30年シーズンのインフルエンザについて

はじめに
H29-30年シーズンのインフルエンザ症例において、週別患者数および今シーズンから改良された迅速診断キットについて陽性判定時間を検討しましたので報告します。

対象と方法
H29年11月10日からH30年4月10日までに発熱などの症状で当院を受診し、インフルエンザを疑われ迅速検査を施行した延べ1990例を対象にしました。
罹患症例を週別に集計しました。迅速診断キットはクイックナビFlu2、アルソニック、イムノエースを用いました。各キットで陽性判定までの時間を測定しました。クイックナビFlu2とイムノエースは今シーズンから5分の判定キットに改良されています。

結果
検査数は述べ1990例で、A型罹患は376例、B型罹患は603例でした。複数回罹患症例についてはA型とB 型に罹患した症例は64例(うち2例は同時罹患)でした。 A型に2回罹患した症例は2例、 B型に2回罹患した症例は1例、 A型2回とB型にも 罹患した症例は1例(4月13日にも1例)でした(図1)。

H29-30(2017-2018)年シーズンの流行は早く始まり、当院での初めての症例はH29年11月10日でA型でした。A型は1月中旬頃にピークを向かえ、以後漸減しました。B型は年明けから始まり、急激に増加し2月最初にピークを向かえ、漸減しました。抜き打ち的に調べた分離ウイルスはA型では前半はA(H1N1pdm)、後半はA(H3N2)でした。B型では前半は山形系統で後半はビクトリア系統でした(図2)。

3つの迅速キットについてA型インフルエンザの陽性判定時間ヒストグラムを示します。横軸は陽性判定時間を30秒ごとに示し、縦軸は陽性判定された症例の累積%です。3つともほぼ同様カーブを示しますが、クイックナビFlu2、アルソニック、イムノエースの順に判定時間が短い傾向が認められました(図3)。
B型での結果を示します。クイックナビFlu2の判定時間が短く、アルソニックとイムノエースはほぼ同様の結果でした(図4)。(イムノエースは240例でしたが、1例は測定ミスのためn=239となっています)また、3つの迅速キットともにA型の方がB型よりも判定時間が短い時間傾向がありました。

まとめ
今シーズンはA型で始まり、B型の大きなピークがあり、全体としては大きな流行となりました。ウイルス検査は抜き打ち的ではありますが、A型では始まり頃はA(H1N1pdm)、終わり頃はA(H3N2)、B型ではピーク頃は山形系統、終わる頃はビクトリア系統で4つのウイルスの流行がありました。
迅速診断キットはいずれも有用でしたが、それぞれ若干の判定時間の差もあり、特性を知り慣れたキットを使いこなすことが重要であると思われました。


7.当院でのH30-31年シーズンのインフルエンザについて

はじめに
発熱後すぐ受診される方や、園や学校から「早く受診して検査してもらってきてください」と言われ、発症早期に受診される方が多く見られます。一番良い検査のタイミングを見つけるために、H30-31(2018-2019)年シーズンのインフルエンザ症例において発熱(37.5℃としました)から迅速検査までの時間と陽性判定時間との関係を検討しました。また、H29-30年とH30-31年の両シーズンにおいて1回目の検査で陰性判定され、3日以内の再検査で陽性判定された症例において迅速キットの限界時間の検討をしました。

対象と方法
H30年12月10日から4月6日までに発熱などでインフルエンザを疑い、迅速検査を施行した885症例を対象にしました。迅速キットはイムノエース、アルソニック、クイックナビFlu2を用いました。
3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例はH29-30年およびH30-31年シーズンでイムノエースではA型で9例、B型で14例、アルソニックではA型で8例、B型で4例およびクイックナビFlu2ではA型で2例、B型で13例でした。

結果
検査数は述べ885例で、A型罹患は319例、A型2回罹患が1例で、B型は認められませんでした(図1)。

H30-31年(2018-2019)年シーズンは12月中頃から始まり、1月中頃から2月初めにピークを向かえました。抜き打ち的に調べた分離ウイルスはA(H3N2)が多いようでした(図2)。

37.5℃以上の発熱から迅速検査までの時間と陽性判定時間との関係を示します。縦軸は陽性判定された時間の平均値、横軸は発熱から検査までの時間を示しています(図3)。イムノエースとクイックナビでは0~5時間に比べて6~23時間では、判定時間が短い傾向がありましたが、統計学的には有意ではありませんでした。アルソニックでは、48~71時間と遅く検査された場合は陽性判定時間が長くなる傾向はありましたが、発症からの時間と判定時間には大きな差は認められませんでした。

3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例を示します(図4)。縦軸は1回目の検査時の発熱からの経過時間を示しています。イムノエースB(イムノエースで診断されたインフルエンザB型)では14例中3例が発熱から検査までの時間不明、アルソニックA(アルソニックで診断されたインフルエンザA型)で6例中1例が時間不明でした。3キットともにB型では時間が長くても陰性と判定される(偽陰性)傾向は認められましたが、有意差はありませんでした。

暫定的に約7時間で区切ると(赤い点線)、これより長い時間で偽陰性となった症例はA型では2例のみ、約16時間で区切ると(青い点線)、これより長い時間で偽陰性になった症例はB型では1例のみでした。

3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例の一覧を示しています(表1)。A型ではクイックナビ、アルソニック、イムノエースの順で偽陰性率が低い傾向がありました。B型では3キットともにほぼ同じ偽陰性率であり、A型より偽陰性率が高い傾向がありました。

まとめ
今シーズンはA型のみの小さな流行でした。分離ウイルスでは抜き打ち的ではありますが、A(H2N3)が多く見られました。発熱からの時間と陽性判定時間との間には有意な関係は認められませんでしたが、B型の方が陽性判定されにくい傾向がみられました。
発熱から早期に検査しても陽性判定される症例もあり、ベストな検査時期を見つけることはできませんでした。症例ごとに、理学初見および流行状況等を参考に検査する必要があると思われました。


8.当院でのR1-2年シーズンのインフルエンザについて

はじめに
インフルエンザ診断において、一番良い迅速検査のタイミングを見つけるために、昨シーズンと同様に発熱(37.5℃)から検査までの時間と陽性判定時間との関係を検討しました。

また、H29-30(2017-2018)年シーズン、咋シーズン、および今シーズンのインフルエンザ患者さんで、初回の迅速検査で陰性判定され、3日以内の再検査で陽性判定された症例において発熱から初回検査までの時間を調べて各迅速検査キットの限界時間の検討をしました。

対象と方法
今シーズンはR1年10月29日からR2年3月24日までに発熱などで当院を受診し、インフルエンザを疑い、迅速検査を施行した1052症例を対象にしました。迅速検査キットはイムノエース、アルソニック、クイックナビFlu2を用いました。

3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例はH29-30年、H30-31年およびR1-2年の3シーズン合計でイムノエースではA型13例、B型14例、アルソニックではA型13例、B型7例およびクイックナビFlu2ではA型6例、B型13例でした。

結果
今シーズンのインフルエンザはA型475例、B型50例で、12例がA型とB型に両方罹患し、1例がA型に2回罹患していました(図1)。

今シーズンは流行開始時期は早くA型はR1年10月末頃から始まり、12月末頃とR2年1月末頃に2峰性にピークを認め、R2年2月末には終息しました。抜き打ち的に調べた結果、分離されたウイルスは全例でA(H1N1pdm)でした(図2)。B型はR2年2月中頃から流行が始まり、3月初旬に小さなピークを認め3月末には終息しました。全体的には中程度の流行規模でした(図2)。

37.5℃以上の発熱から迅速検査までの時間と陽性判定時間との関係を示します。縦軸は陽性判定された時間(秒)、横軸は発熱から検査までの時間を示しています。全例プロットしました。3キットともに発熱からの検査までの時間と陽性判定時間には有意な相関関係は認められませんでした(図3図4図5)。

3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例を示しています。A型については、初回検査は陰性で3日以内の再検査で陽性となった例は、イムノエース、アルソニック、クイックナビFlu2それぞれ全陽性例に対して、3.3%、3.1%、1.6%でクイックナビがやや低い傾向でした。B型については、それぞれ5.8%、6.1%、4.4%であり、3キットともにA型よりB型の方が頻度が高い傾向が認められた(表1)。

3日以内の再検査で陰性から陽性判定となった症例において、各キットごとにA型、B型別に、初回検査時の発熱からの経過時間を示しています。イムノエースとアルソニックではB型の方がA型よりも発熱から長い時間経過して検査しても陰性判定されていました(図6)。

3キットとも陰性一致率は95%以上なので、A型では約14時間(破線)、B型では約17時間(一点鎖線)経過すればほぼ正しく診断されると考えられた(図6)。

まとめ
1. 今シーズンのインフルエンザはAH1を中心とした中程度の流行規模であった。
2. 発熱(37.5℃)から検査までの時間と陽性判定時間との間には有意な相関関係は認められなかった。
3. 初回検査が陰性、3日以内の再検査で陽性となった症例の検討では、3キットともにA型よりB型で初回で陰性判定される症例が多かった。クイックナビが他のキットに比べて、A型、B型ともに初回で陰性判定される率は低い傾向があった。
4. イムノエースとアルソニックではB型がA型よりも長い時間経過して検査しても陰性となる傾向があった。当該症例から見積もった検査の限界時間はA型では約14時間、B型では約17時間と思われた。

発熱から早期に検査しても陽性判定される症例もあり、一番良い検査時期を見つけることはできませんでした。症例ごとに、理学初見および流行状況等を参考に検査する必要があると思われました。

新型コロナウイルス感染症の影響でまとめが遅くなりました。

通常診療時間外のお子様の急な発熱、ひどい咳、嘔吐や下痢などでお困りのことも多く経験されると思います。日頃からかかりつけの小児科を通常時間内に受診することをお薦めいたしますが、急な場合の受診方法をお知らせします。

(図1)

1)西条市休日夜間急患センター

住所:西条市野々市40番地1
電話:0897-52-2001
診療科目:内科、外科(ただし、外科は休日のみ)
診療時間:月〜土曜日(内科系のみ) 午後7時〜午後10時
日、祝日(内科、外科) 午前9時〜午後6時
月〜土曜日の外科は外科系診療所が自院で午後10時まで当番。
休診日:8月15日、16日、10月15日、16日


2)新居浜市内科・小児科急患センター

住所:新居浜市一宮町1丁目13-52
電話:0897-32-5658
診療科目:内科、小児科
診療時間:月〜土
   20時〜23時(必ずしも小児科医がいるとは限りません)
   診療時間21時〜翌6時(月、水、金、土)(必ず小児科医が対応)
   23時〜翌6時(火、木)(必ず小児科医が対応)
休日:9時〜17時(必ずしも小児科医がいるとは限りません)
日曜日18時〜21時(必ず小児科医が対応 ※年末年始およびGWは例外)
※休日は日曜日、祝日、国民の休日、振替休日、12月31日、1月2日、1月3日

3)入院が必要な場合、または救急車で受診する場合

外傷等の外科疾患を除く小児科二次救急は、平成25年8月1日から東予東部の四国中央病院、愛媛県立新居浜病院、住友別子病院、西条中央病院が輪番で対応していましたが、H27年4月から住友病院が輪番から外れ3病院での対応となりました。

(図2)

はじめに

私たち小児科医にとって毎日の診療は勿論、予防接種や健診は非常に大切な業務です。私は当院近くの産婦人科診療所での新生児健診の機会を得ました。
院長先生の許可を得て、当地区のお産状況を調べさせて頂きました。同時に私が産婦人科診療所に出向き新生児健診を行うことにより、当院の新生児や乳児の新規患者数に変化があるか否かを調べてみました。



対象および方法

私はH25年4月からH27年3月まで当院近くの産婦人科に出向き新生児健診を行ないました。当該産婦人科では原則正常分娩は5日齢で退院、帝王切開では8日齢で退院することになっています。H26年度の1年間に当該産婦人科にて出生した434人のうち、私が健診する前に退院した11名を除く423人について調べさせて頂きました。
当院における1歳未満の新規患者数の検討は、新生児健診前のH24年度を対照とし、H25年度およびH26年度に当院を受診した新規患者数を月齢ごとに比較しました。



結果

1.西条市のお産状況

居住地区では、当該産婦人科がある旧西条地区が最も多く201人、旧周桑地区が96人、新居浜市が21人、その他(里帰り分娩)が100人でした(4人記載忘れ)(図1)。
母親の年齢を出産回数別に調べました。第一子の母親の年齢は25-29歳、30-34歳、20-24歳、35-39歳、19歳以下、40歳以上の順でした。
第二子の母親の年齢も第一子とほぼ同様でしたが、19歳以下の母親で2子をもうけている者はいませんでした。第三子の母親の年齢は30-34歳、25-29歳、35-39歳の順で、第四子以上では、30-34歳、35-39歳の順でした(図2)。
在胎週数では満期産がほとんどで、39週が最も多く、以下40週、38週、41週37週でした。36週の早期産は2人、42週の過期産児は1人見られました(図3)。
出生体重では3000から3500g未満が最も多く、以下2500から3000g未満、3500から4000g未満の順でした。2000から2500g未満の低出生体重児は15人で、このうち1人は骨の異常を認め、愛媛大学病院を、もう1人は無呼吸があり、県立新居浜病院を紹介しました。4000g以上および2000g未満の児はいませんでした(図4)。
分娩様式は経膣正常分娩が275名、吸引分娩が84名、帝王切開が59名(14%)でした(4名記載忘れ)(図5)。
B群溶連菌(GBS)が児に垂直感染を起こすと、早発型(肺炎、髄膜炎、敗血症、ショック、DIC)と遅発型(1週間以降、髄膜炎が主)の感染症を起こし、早発型では児の死亡や後遺症としての重篤な中枢神経障害を合併する危険性がある怖い病気です。GBSの保因者は日本では6-10%、その中で重篤な感染症を発症するのは約1%、したがって全分娩数の約1/1,000未満の発病率と考えられています。今回の結果では11.7%の保因者がいましたが、発症した児はいませんでした(図6)。
何らかの理由で産科から他院を紹介した症例は28人でした。そのうち7人は直接産科から二次病院に紹介、21人は当院に紹介されました。当院に紹介された21人のうち精査、治療目的に他病院紹介した症例は8人で、残り13人は当院で経過観察しました(図7)。他病院を紹介した15人の詳細です。黄色で示した症例は産科から直接二次病院を紹介した7人で、紹介病院は全て県立新居浜病でした。無呼吸が3人、酸素飽和度(SpO2)の低下が2人、高ビリルビン血症、多呼吸がそれぞれ1人でした。診断は胎児ジストレス、ABO不適合、エアリーク、VSD、縦隔気腫でした。残り8人は当院から精査のため他病院を紹介しました(表1)。


2.当院における新生児と乳児の新規患者数の変化

産婦人科に健診に出かけることで、当院の新生児(1か月未満)や乳児(1歳未満)の患者さんの数がどう変化するかを調べました。新生児健診前のH24年度を対照とし、H25年度およびH26年度に当院を受診した新規患者数を月齢ごとに比較しました。
H24年度の新生児の新規患者数は23例で、H25年度およびH26年度はそれぞれ44人、35人でありH25年度はH24年度に比して有意(p<0.05)に増加していました。1か月児ではH24年度は71人であり、H25年度およびH26年度はそれぞれ87人、67人であり有意差は認められませんでした。2か月児ではH24年度が144人、H25年度およびH26年度はそれぞれ157人、174人でH26年度ではH24年度に比して有意(p<0.05)に増加していました(図8)。
新生児と1か月児の合計ではH24年度、H25年度およびH26年度はそれぞれ94人、130人および102人で、H25年度ではH24年度比べて有意(p<0.05)に増加していましたが、H26年度では差はありませんでした。2か月以下ではH25年度およびH26年度ではH24年度に比して有意(p<0.01)に増加していました(図9)。
産婦人科からの当院への新生児および1か月児の紹介数を調べました。H24年度は1人のみでしたが、新生児健診後はH25年度およびH26年度はそれぞれ28人、21人と増加していました(p<0.0001)(図10)。
3か月より年長児も調べましたが、新規患者数は不変かまたはむしろ減少しており、1歳未満の新規患者総数ではH24年度は436人、H25年度は456人、H26年度は433名であり差はありませんでした(図11)。



考察

近くの産婦人科診療所に新生時健診に出務することにより、産科からの紹介数は増加し、早期に当院を受診する傾向が認められました。しかし乳児全体では受診数の増加には至りませんでした。当地区では分娩可能な産科診療所は1軒で(総合病院産婦人科1軒)、小児科診療所は6軒(総合病小児科1軒)という特殊な事情があり、かかりつけ小児科が分散されるためと考えられました。しかし、小児科を早期受診する機会が増加することは早期の予防接種につながり、病気の予防の観点からも重要なこと思われました(図12)。



まとめ

1)0、1、2か月児の受診数は増加していました。
2)0、1か月児の増加は産科からの紹介患者数増加のためと思われました。
3)1歳未満の新規患者総数の増加は認められませんでした。

最後にデータの開示を快く承諾して頂きました坂田圭司院長に深謝いたします。

  ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は2001年にrespiratory syncytial virus(RSV)感染症と同様の症状を示す小児の鼻咽頭から発見されたウイルスです。少なくとも50年以上前からヒト社会で流行してきたウイルスであり、5歳までにほぼ全ての小児が感染すると言われています。上気道炎(いわゆるかぜ)から重症の細気管支炎や肺炎を引き起こし、小児の下気道炎の原因としてはRSVに次いで2番目に多いとされています。決してまれな病気ではありません。
  hMPVの流行は毎年あり、時期は3月から6月です。症状は咳がひどく、熱も高く3-4日続きます。年齢では1〜2歳児の感染が最も多く、発熱の持続日数も最も長いと報告されています。鼻汁はほとんどの症例で見られますが、RSウイルス感染症がほぼ全例でひどい鼻汁となりますが、hMPVでは軽度の症例もみられます。
  潜伏期間は2〜6日で、感染様式は飛沫感染のほか、喀痰や鼻汁中のウイルスが手指や器物を介して接触感染によっても伝搬するとされています。感染力は強く、家族発生もしばしば認められます。
  治療はインフルエンザに対するタミフルのような特効薬はなく、ひどい咳や痰に対して、鎮咳薬や去痰薬を使用し、また気管支拡張剤の吸入やロイコトリエン受容体拮抗剤などを使います。抗生物質は基本的には用いません。
  H27年4月を中心にhMPV感染症がたくさん見られました。当院で経験した症例を提示します。
H27年2月1日から4月30日までに当院を咳、発熱を主訴に受診した4歳以下の患者さんの鼻咽頭ぬぐい液を採取し、迅速検査が陽性であった40例をまとめました。

■結果
1)男女比は男児が15例、女児が25例でした。(一般的には男女差はないとされています)
2)就園状況では保育園児が24例、幼稚園児が3例、未就園児が10例、託児所が3例でした。
3)年齢は0歳が8例、1歳が14例、2歳が9例、3歳が3例、4歳が6例で平均2歳1ヶ月±1歳3ヶ月でした(図1)。
4)発熱期間は0日から6日間で平均3.2日±1.4日でした(図2)。
5)年齢と発熱期間には一定の傾向はありませんでした。
6)咳は全例でひどく、咳で十分眠れない症例がほとんどでした。また、咳で発症した(熱より先に)症例は21例(48%)でした。1週間から10日間続きました。
7)鼻汁は全例で認めましたが、ひどい例は11例でした。
8)喘鳴およびラ音は24例(60%)で聴取されました。
9)家族内感染は40%に認められました。(家族内の他の症例については、必ずしも迅速検査はしてなく、臨床的に判断しています)

■症例提示

症例 S.S(H27年2月16日)男
主訴 全身状態不良
現病歴 36週6日、2759gで出生。1ヶ月健診で異常なし。H27年3月26日、普段は120-140ml/回のミルク量が70-100ml/回であった。3月27日母親が発熱していたため、祖母に預けていた。22時頃からミルクは飲めていなかった。28日朝、顔色悪く、ぐったりしていたため当院受診した。
現症 体温35.5℃、全身チアノーゼ著明。呼吸音は聴取されたが、ラ音(+)SpO270%
経過 酸素投与してSpO2が95%に上昇を確認し、すぐ某病院に入院依頼した。病院到着した時、呼吸停止した。気管内挿管した後、三次病院に転送された。7日間のICU管理の後、4月14日退院した。
4月18日当院受診されたが、順調に経過していた。

  1歳未満の症例については、6ヶ月未満児では発熱率は低く、発熱期間も短いという報告があり、母親からの移行抗体の影響が考えられています。乳児早期では発熱を伴わず咳と鼻閉が主症状であることが多く、下気道炎ばかりでなく口呼吸ができない乳児早期では無呼吸を起こし、適切な処置がなければ死に至ることも念頭に入れておくことが必要と思われました。
  RSウイルスでは乳児に無呼吸や突然死をきたすことが知られていますが、hMPVも十分気をつける必要があると痛感させられました。

 RSウイルス(Respiratory syncytial virus)は1956~1957年に米国で分離培養された一本鎖RNAウイルスで、組織培養を行うと特徴的な合胞体(syncytium)を作ることからこのように命名された。
 RSウイルス感染症は、乳幼児における最も頻度の高い呼吸器感染症であり、生後1歳までに70%、2歳までにほぼ100%が感染する。中心的な病像は喘息と良く似た症候を示す細気管支炎である。
 4~5日の潜伏期の後、発熱、鼻汁、咳嗽などの上気道の症状で発症する。約70%の症例はこのまま数日で軽快するが、残り30%では、2-3日後感染が下気道に及び、咳嗽の増強、喘鳴、さらに呼吸困難などの症状を呈してくる。38~39℃の発熱が出現することがある。それらはさらに数日から1週間の経過で快方に向かう()。
 1歳未満、特に6ヶ月未満の乳児、心肺に基礎疾患を有する小児、早産児が感染すると、呼吸困難などの重篤な呼吸器症状を引き起こし、入院、呼吸管理が必要となる場合もある。
 治療は特異的なものはなく、対症療法が主体となる。一般的には喘息に準じた治療が行われる。

 家庭では、
1)呼吸が苦しそうな時は、背中をやさしくたたいたり、体を起こすように抱っこして上げて下さい。
2)鼻がつまっている時は、綿棒でそうじしたり、鼻水を吸い取って上げて下さい。
3)適度に加湿をして下さい。
4)病状の変化を見極めることが重要です。ゼイゼイ、ヒューヒューがひどい、胸やおなかをペコペコさせている、顔色が悪い、母乳やミルクののみが悪い時には小児科を早急に受診して下さい。

 こどもにとっても看護する親にとっても非常に怖い病気です。有効なワクチンの開発が望まれます。

☆VPDについて

2013-10-24

 最近よく耳にする言葉で、皆様ご存知の方が多いと思いますが、VPDとはvaccine(ワクチン) preventable(防ぐことができる) diseases(病気)即ちワクチンをしていればかからずにすむ病気のことをいいます。

 発熱、嘔吐などを主症状とする病気で、小さな子どもさんがかかると抗生物質が発達した現在でも治療が困難な非常に怖い病気です。

 Hib(インフルエンザ菌b型)と肺炎球菌による髄膜炎は予防接種をすることによりかなりの確率で罹患することを防ぐことが可能となります。

 H12年4月からH22年3月までに東予東部(西条市、新居浜市、四国中央市)での細菌性髄膜炎の症例を集計してみました。結果11例のインフルエンザ菌髄膜炎、4例の肺炎球菌髄膜炎、2例のB群溶連菌髄膜炎が当地区で発症していました(図1)

 年齢分布では生後2日目から4歳までで、GBS症例は2日と10日の新生児、3ヶ月児では1例肺炎球菌、2例インフルエンザ菌、7~12ヶ月児では、2例は肺炎球菌、4例インフルエンザ菌、1歳2歳はインフルエンザ菌、4歳肺炎球菌でした(図2)

 性別では男児8例、女児9例で性差はありませんでした。幸いにして死亡例はありませんでしたが、入院期間は約1ヶ月間と長く後遺症としててんかん2例、難聴1例が認められました。

 日本ではH20年12月にHib(インフルエンザ菌b型、ヒブ)ワクチン、 H22年2月に7価肺炎球菌結合ワクチンが接種可能となり、H22年度から全国的に公費負担となりました。接種率の向上とともにインフルエンザ菌髄膜炎および菌血症は公費助成前のそれぞれ92%、82%の減少、肺炎球菌髄膜炎および菌血症はそれぞれ73%、52%減少しています。肺炎球菌感染の減少率が低く、H25年11月から先進諸外国と同様に7価から13価ワクチンに変更されます。

 是非、生後2ヶ月からHib、肺炎球菌ワクチンを受けましょう!!

 麻疹(はしか)は最近、ほとんど見かけなくなりましたが、子ども(大人も)にとって本当にしんどい病気です。症状は良くご存知だとは思いますが、発熱、咳嗽などで始まり、いったん少し解熱傾向の後、再び高熱が出現し顔面、体幹、四肢に発疹が出現します。合併症も多く、入院する場合も多くみられます。詳しくはインターネットなどで調べてください。

 H14年11月からH15年5月までに東予地区で麻疹が小流行しました。
当時まとめたデータを示します。

 18歳未満の症例は195例でワクチン接種している者は22例、18歳以上の成人麻疹では110例のうちワクチン接種例は18例でした(図1)

 ワクチンを接種しているのに麻疹に罹患した40例についてまとめました(図2)。

Vaccine failure(ワクチン効果不全)40例のまとめです。18歳以上で入院が多い意外に差はありませんでした。ワクチン種の検討ではビケンワクチンが多い傾向があったが、不明が多く、ワクチンの流通も不明なため結論は出ませんでした。

今回検討のまとめ

1. 305症例のうち40例(13.1%)がワクチン接種の既往があり、Vaccine failure(ワクチン効果不全)であり、18歳未満、18歳以上ではそれぞれ11.3%、16.4%にみられました。

2. 症状は抗体価を測定しなければ麻疹と診断できない軽症例から通常麻疹 までみられたが、18歳以上の成人麻疹の方がやや重症であった。通常麻疹症例では症状からPVF(ワクチン接種したが抗体ができなかった)とSVF(一度は抗体が上昇したが時間の経過で抗体が消失した)とを区別することは困難でした。

3. Vaccine failureの要因としてワクチン種、接種年齢、罹患 までの期間な どを検討しましたが、明らかな要因は不明でした。


 H18年6月からMRワクチンの2回接種が開始されました。

風疹

 風疹はH25年都市部を中心に小流行が認められ、ワクチンの欠品もみられました。幸い当地区には流行はみられませんでした。この病気の症状は麻疹と比べますと、軽くしんどい病気ではありませんが、妊娠早期の妊婦さんが感染しますと、胎児に感染し心臓病、難聴、目の障害などの先天性風疹症候群という恐ろしい病気を起こすことがあります。

 MRワクチンを受けましょう!!!

3) 百日咳

2013-10-21

 百日咳菌が引き起こす、遷延する咳嗽発作を主症状とする急性気道感染症です。最近増加傾向にあります。

当院でのデータを示します。
 2007年および2011年の診断基準を用いて百日咳症例を診断し、その差を検討しました。また、各症例のDPT歴を調べ現行のワクチン制度の問題点を考えました。
 対象は2008年4月から2012年3月までの4年間に当院を受診した患者さんのうち、2週間以上咳嗽が続き、発熱、喘鳴を伴わない79症例について、百日咳菌抗体価を細菌凝集法およびEIA法で測定しました。

 結果
 年齢別の症例数を示す。検査した症例、2007年、20011年基準すべて6-10歳で最も多く、続いて11-20歳、31歳以上、1-5歳の順でした(図1)

 2007年および2011年診断基準による百日咳症例におけるDPT接種歴の詳細を示している。多くの症例で4回接種されていた。不明の症例は全員30歳以上の成人でした(図2)

 日本とアメリカのDPTワクチン接種状況を示している。18ヶ月まではほぼ同様です。アメリカでは4-5歳で追加、さらに(2005年から)11-18歳で推奨、(2006年から)定期接種、2007年から成人に推奨されている。今回の検討でも6歳前後、11歳前後は最も感染者が多く認められた年齢であり、アメリカの制度は非常に妥当と思われた。我が国でも、最低限、11-12歳のDTをPを含むワクチンに変更すること、できれば4-6歳で追加接種をすることが必要だと思われます(図3)

 まとめ(図4)

 DPTワクチンを受けましょう!!!

 原因:水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染による疾患です。飛沫および接触で感染します。潜伏期間は14-16日で、伝染力は発疹の現れる1日前から、すべての皮疹が痂皮となるまで。

 症状:軽い熱とともに発疹が現れる。紅斑、丘疹、水疱と経過する。

 合併症:二次的細菌感染症、脳炎、肺炎

図1 みずぼうそうの色々な症状
左上:通常のみずぼうそう
右上:重症のみずぼうそう
左下:細菌感染を合併しトビヒ様になった症例
右下:細菌感染を合併し皮下膿瘍を作った症例

図2 帯状疱疹

H26年10月1日から水痘(みずぼうそう)ワクチンが定期接種となり、
無料で受けることができるようになりました。