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2013年10月アーカイブ

☆VPDについて

2013-10-24

 最近よく耳にする言葉で、皆様ご存知の方が多いと思いますが、VPDとはvaccine(ワクチン) preventable(防ぐことができる) diseases(病気)即ちワクチンをしていればかからずにすむ病気のことをいいます。

 発熱、嘔吐などを主症状とする病気で、小さな子どもさんがかかると抗生物質が発達した現在でも治療が困難な非常に怖い病気です。

 Hib(インフルエンザ菌b型)と肺炎球菌による髄膜炎は予防接種をすることによりかなりの確率で罹患することを防ぐことが可能となります。

 H12年4月からH22年3月までに東予東部(西条市、新居浜市、四国中央市)での細菌性髄膜炎の症例を集計してみました。結果11例のインフルエンザ菌髄膜炎、4例の肺炎球菌髄膜炎、2例のB群溶連菌髄膜炎が当地区で発症していました(図1)

 年齢分布では生後2日目から4歳までで、GBS症例は2日と10日の新生児、3ヶ月児では1例肺炎球菌、2例インフルエンザ菌、7~12ヶ月児では、2例は肺炎球菌、4例インフルエンザ菌、1歳2歳はインフルエンザ菌、4歳肺炎球菌でした(図2)

 性別では男児8例、女児9例で性差はありませんでした。幸いにして死亡例はありませんでしたが、入院期間は約1ヶ月間と長く後遺症としててんかん2例、難聴1例が認められました。

 日本ではH20年12月にHib(インフルエンザ菌b型、ヒブ)ワクチン、 H22年2月に7価肺炎球菌結合ワクチンが接種可能となり、H22年度から全国的に公費負担となりました。接種率の向上とともにインフルエンザ菌髄膜炎および菌血症は公費助成前のそれぞれ92%、82%の減少、肺炎球菌髄膜炎および菌血症はそれぞれ73%、52%減少しています。肺炎球菌感染の減少率が低く、H25年11月から先進諸外国と同様に7価から13価ワクチンに変更されます。

 是非、生後2ヶ月からHib、肺炎球菌ワクチンを受けましょう!!

 麻疹(はしか)は最近、ほとんど見かけなくなりましたが、子ども(大人も)にとって本当にしんどい病気です。症状は良くご存知だとは思いますが、発熱、咳嗽などで始まり、いったん少し解熱傾向の後、再び高熱が出現し顔面、体幹、四肢に発疹が出現します。合併症も多く、入院する場合も多くみられます。詳しくはインターネットなどで調べてください。

 H14年11月からH15年5月までに東予地区で麻疹が小流行しました。
当時まとめたデータを示します。

 18歳未満の症例は195例でワクチン接種している者は22例、18歳以上の成人麻疹では110例のうちワクチン接種例は18例でした(図1)

 ワクチンを接種しているのに麻疹に罹患した40例についてまとめました(図2)。

Vaccine failure(ワクチン効果不全)40例のまとめです。18歳以上で入院が多い意外に差はありませんでした。ワクチン種の検討ではビケンワクチンが多い傾向があったが、不明が多く、ワクチンの流通も不明なため結論は出ませんでした。

今回検討のまとめ

1. 305症例のうち40例(13.1%)がワクチン接種の既往があり、Vaccine failure(ワクチン効果不全)であり、18歳未満、18歳以上ではそれぞれ11.3%、16.4%にみられました。

2. 症状は抗体価を測定しなければ麻疹と診断できない軽症例から通常麻疹 までみられたが、18歳以上の成人麻疹の方がやや重症であった。通常麻疹症例では症状からPVF(ワクチン接種したが抗体ができなかった)とSVF(一度は抗体が上昇したが時間の経過で抗体が消失した)とを区別することは困難でした。

3. Vaccine failureの要因としてワクチン種、接種年齢、罹患 までの期間な どを検討しましたが、明らかな要因は不明でした。


 H18年6月からMRワクチンの2回接種が開始されました。

風疹

 風疹はH25年都市部を中心に小流行が認められ、ワクチンの欠品もみられました。幸い当地区には流行はみられませんでした。この病気の症状は麻疹と比べますと、軽くしんどい病気ではありませんが、妊娠早期の妊婦さんが感染しますと、胎児に感染し心臓病、難聴、目の障害などの先天性風疹症候群という恐ろしい病気を起こすことがあります。

 MRワクチンを受けましょう!!!

3) 百日咳

2013-10-21

 百日咳菌が引き起こす、遷延する咳嗽発作を主症状とする急性気道感染症です。最近増加傾向にあります。

当院でのデータを示します。
 2007年および2011年の診断基準を用いて百日咳症例を診断し、その差を検討しました。また、各症例のDPT歴を調べ現行のワクチン制度の問題点を考えました。
 対象は2008年4月から2012年3月までの4年間に当院を受診した患者さんのうち、2週間以上咳嗽が続き、発熱、喘鳴を伴わない79症例について、百日咳菌抗体価を細菌凝集法およびEIA法で測定しました。

 結果
 年齢別の症例数を示す。検査した症例、2007年、20011年基準すべて6-10歳で最も多く、続いて11-20歳、31歳以上、1-5歳の順でした(図1)

 2007年および2011年診断基準による百日咳症例におけるDPT接種歴の詳細を示している。多くの症例で4回接種されていた。不明の症例は全員30歳以上の成人でした(図2)

 日本とアメリカのDPTワクチン接種状況を示している。18ヶ月まではほぼ同様です。アメリカでは4-5歳で追加、さらに(2005年から)11-18歳で推奨、(2006年から)定期接種、2007年から成人に推奨されている。今回の検討でも6歳前後、11歳前後は最も感染者が多く認められた年齢であり、アメリカの制度は非常に妥当と思われた。我が国でも、最低限、11-12歳のDTをPを含むワクチンに変更すること、できれば4-6歳で追加接種をすることが必要だと思われます(図3)

 まとめ(図4)

 DPTワクチンを受けましょう!!!

 原因:水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染による疾患です。飛沫および接触で感染します。潜伏期間は14-16日で、伝染力は発疹の現れる1日前から、すべての皮疹が痂皮となるまで。

 症状:軽い熱とともに発疹が現れる。紅斑、丘疹、水疱と経過する。

 合併症:二次的細菌感染症、脳炎、肺炎

図1 みずぼうそうの色々な症状
左上:通常のみずぼうそう
右上:重症のみずぼうそう
左下:細菌感染を合併しトビヒ様になった症例
右下:細菌感染を合併し皮下膿瘍を作った症例

図2 帯状疱疹

H26年10月1日から水痘(みずぼうそう)ワクチンが定期接種となり、
無料で受けることができるようになりました。

 原因:ムンプスウイルスで飛沫感染により鼻腔咽頭から侵入する。潜伏期間は14-21日。

 症状:1-2日間頭痛、発熱があり、片側または両側の耳下腺がはれる。70-80%は両側で、片側が腫れて1-2日でもう一方も腫れる。耳介の前・下・後で境界がはっきりせず、発赤もない。腫脹は3-7日で消失する。

 合併症:髄膜炎、髄膜脳炎が最も頻度の高い合併症で、髄膜炎の合併率は20%。精巣炎は成人では25-30%に合併するが小児ではまれである。

 ワクチンは任意接種で費用がかかります。

7) ロタウイル

2013-10-17

 主に初冬から初春にかけて、およそ6ヶ月から2歳の乳幼児を中心に発症する。原因が特定されたウイルス性下痢症の約半数を占め,最も頻度が高い。

 病初期に発熱と嘔気、嘔吐がみられ、2日目以降嘔吐回数は減り、血便のない下痢がはじまる。潜伏期は2-4日。白色の下痢便が約半数に見られる。およそ3-7日で治癒する。脱水などのために入院治療することもある。

 胃腸炎以外の症状として熱性けいれんや無熱性けいれん、肝機能障害を認めることがある。

 ワクチンは任意接種で費用がかかります。

8) その他

2013-10-16

 BCG、ポリオ(4種混合)、日本脳炎、子宮頸がん(定期接種で無料)

 B型肝炎など(任意接種で有料)

 小児科の主治医とよく相談してください。

☆ 手足口病

2013-10-15

 主にコクサッキ-ウイルスA16型、エンテロウイルス71型の感染によっておこる。6歳以下の小児に好発し、夏季に流行する。

 潜伏期間は3-6日で、発熱は一部の症例に認められるにすぎない。発熱と同時、または1両日おくれて、口腔内にアフタ様病変を生じ、さらに1-2日おくれて、手掌・足底・指趾に小水泡を前腕・下肢・臀部などに丘疹を生ずる。その後2-4日で、水疱は乾いて飴色の斑となり、丘疹は中心から陥没しはじめ、痂皮を形成する。1週間から10日で、瘢痕を残さず治癒する。

 H25年度の手足口病はコクサッキ-ウイルスA6型、エンテロウイルス71型による症例があり、今シーズン2回罹患した症例もいます。

 H23年度は症状がすごくひどく水疱も大きく広範囲に認める症例を経験しました(図)

☆ 腸重積

2013-10-14

疾患概念:
口側腸管が肛門側腸管へ陥入することによって腸閉塞をきたす疾患である。好発年齢は3ヶ月から2歳であり、男女比はおよそ3:2でやや男児に多い。アデノウイルやロタウイルスが原因として上げられている。

臨床症状:
数日前に上気道感染の症状がある栄養状態の良好な乳児が突然激しく渧泣し始める。その後、機嫌が戻るがしばらくするとまた急に激しく泣き始めるといった間欠的不機嫌(渧泣)を認め、さらに嘔吐も出現する。不機嫌・渧泣は80%、嘔吐は80%、粘血便は70%に認められるが、すべてそろうことは少ない。

図1
左上:腸重積の血便
右上:エコーでのターゲットサイン(二重丸◎のような像)
左下:横行結腸の中程に蟹の爪像
右下:整復後

図2
回腸回腸結腸型の症例で回腸回腸重積が整復できず、手術になった症例

 肺炎マイコプラズマは細胞壁をもたない1~2μmの細菌である。
飛沫に乗って喉頭蓋より下に分布する繊毛上皮に達すると滑走運動で2分以内にかけ下り、接着器官と呼ばれる部分で接着することで感染が成立し増殖を開始する。しかし、あくまでも表在感染であり細胞を次々に破壊する、あるいは組織内部に侵入する能力はない。

 マイコプラズマ自体は感染細胞内に活性酵素を過剰に産生させ粘膜上皮を軽く損傷することの他にはヒトに対して直接的な細胞障害性をもたない。

 潜伏期間は2-3週で発熱、咳嗽、咽頭痛、頭痛、倦怠感などで発症し、咳嗽は次第にひどくなり3-4週間持続し次第に回復する。

当院での経験
 発熱、咳嗽などで当院受診し、マイコプラズマ感染を疑い抗体価を測定した167例のうちPA反応(微粒子凝集反応)が320倍以上の21例につき検討した。
性別、年齢、マイコプラズマ抗体価、検査所見(WBC、CRP、レントゲン所見)、症状(発熱期間)、治療法を検討した。

結果
マイコプラズマ抗体価(図1)
 40倍未満が最も多く、320倍状の症例はわずか21例であった。
採血時期が早く抗体上昇前に測定した症例多く、ほとんどの例でペア血清はとれなかった。開業小児科での限界とも思われた。

対象症例の年齢(図2)
 血清検査した全体の年齢は7.3歳でマイコプラズマ抗体が上昇していた症例の年齢は6.9歳で差はなかった。

発熱期間(図3)
 発熱期間は7.7日であった。

まとめ(図4)
 入院した症例はあったが、抗体上昇以前に紹介した症例であった。
レントゲン写真(図5-9)

診断(マイコプラズマ抗原キットの比較)
 マイコプラズマ感染症の診断には分離培養法、PCR法、LAMP法などの直接証明法とPA法、補体結合反応(CF)、ELISA法、イムノカード法などの血清診断法などがある。一般的にはPA法がよく用いられるが、単血清では確定できない。
 比較的簡単なLAMP法による診断も保険適応となっているが、最近院内で簡単に施行できるマイコプラズマ抗原キットが使用できるようになった(図10)

☆ てんかん

2013-10-12

当院ではてんかんの治療も行っています。

 脳波検査実施数  当院での脳波検査症例をお示しします。
 H11年4月からH25年3月までに123例、380回の脳波検査を施行していました。最近、少し減っておりますが、平均20から30例の脳波検査を行っております。H25年が少ないのは多くの症例で夏休みに脳波検査しているためです(図1)

患者さんの居住地
 西条市が一番多くて71例、続いて新居浜市39例、四国中央市が12例 となっていました。その他は高知県の子どもさんです(図2)

脳波検査施行例の疾患
 開業前は県立新居浜病院に勤務していました。そこで、てんかん患者さんの診療にあたっておりました。H10年12月に開業しましたが、県病院からの症例と開業後の新患とに分けて検討しました。
 継続群が42例、新規が45例、てんかん以外の症例が36例でした(図3)

てんかん患者さん87例の転帰
 87例の患者のうち治療中が57例、治療終了が25例、中断4例、治療せずが1例でした。
 現在治療中57例のうち当院での治療症例は44例であり、他院で治療中の者は13例でした。
 当院治療中の44例のうち、1年以上発作のないものは27例で、発作抑制されていない者は17例でした。
 他院治療中の13例に内訳は、転居等により他院を紹介した症例が4例、他院治療を希望された症例が6例、セカンドオピニオンを求めた症例が3例でした(図4)